認知症の新しい薬は今までの薬とどこがどう違うのか?
昨年、そして今年と相次いで承認されたアルツハイマー型認知症の新薬、レケンビ(一般名レカネマブ)とケサンラ(ドナネマブ)。今までの薬とどう違うのですか、と患者さんやそのご家族から聞かれることも多いです。今年最後となる本記事では、そのまとめを紹介しましょう。
これまでも認知症の薬はありました。アリセプト、レミニール、イクセロンパッチ・リバスタッチ(この2つは商品名は異なりますが、会社が違うだけで同じ薬)、そしてメマリーです。
メマリー以外はアセチルコリンエステラーゼ阻害薬という薬になります。脳の神経細胞がダメージを受けて脳が縮んでくる段階で、アセチルコリンという記憶に関する脳内ホルモンが減っていきます。このアセチルコリンが減るのを防ぐのが薬の役割。薬の成分が脳に到達するとアセチルコリンを分解する酵素をブロックし、アセチルコリンの濃度を保つようにするのです。
一方、メマリーは、NMDA受容体拮抗薬という薬です。脳の中でグルタミン酸という神経伝達物質の受け皿の働きを抑え、神経伝達を整え、神経細胞を保護します。イライラを抑え、感情を穏やかにする働きが期待されます。
いずれも対症療法の薬です。例えば解熱剤は熱を下げる作用がありますが、熱を出す原因となった病気は治せません。症状に対して使う薬が対症療法薬で、アリセプトをはじめとするこれまでの認知症の薬も同じ。だから、病気を発症してから薬を使う。
対して新薬であるレケンビ、ケサンラは、認知症の原因物質であるアミロイドβを除去する病気の治療薬となります。アルツハイマーの症状で生活に支障が生じる前に使います。
アリセプトやメマリーは飲み薬ですが、レケンビ、ケサンラは点滴薬です。30分から1時間ほどかけて、静脈から注入します。今までより根本的なところに作用するため副作用もそれなりにあります。しかし、しっかりと管理した上で投与するので、私のところで治療を受けている患者さんはかなりの数に上るものの、重篤な副作用に見舞われた人は一人もいません。
アミロイドβを減らすという効果を考えると、リスクベネフィットではベネフィットの方が大きく、副作用は小さな問題と捉えられます。