(15)時計遺伝子と老化との深い関係…ノックアウトマウスで明らかに
その後、再びmRNAに転写が開始されることで、時計タンパク質の量は増減を繰り返す。これらの増減のサイクルが24時間周期で行われ、私たちの体はこのサイクルにより地球のリズムに同調していくのである。
■老化は時計の“ズレ”が原因?
ただ、すべての細胞が24時間周期で同期しているわけではない。各細胞の時計遺伝子を統括する役割を果たすのが、脳の視床下部にある「視交叉上核」である。視交叉上核は「親時計」として各細胞の「子時計」を統制して同期させ、これによって概日リズム(サーカディアンリズム)が正しく機能する。しかし、何らかの原因で概日時計が狂った状態が続いてしまうと、身体の制御システムが崩れ、不眠、うつ病、高血圧、代謝異常、免疫低下といった老化に似た症状を発症し得ることが知られている。
実際、主要な時計遺伝子のひとつであるBmal1を欠損させたノックアウトマウスは、概日リズムを失い、寿命が短くなるほか、早期に老化現象を示すことが報告されている。ハーバード大学医学部&ソルボンヌ大学医学部客員教授の根来秀行医師が言う。