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天野篤順天堂大学医学部心臓血管外科教授

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

日本の心臓移植はどうあるべきか…あらためて議論するべき

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 まず、多くの日本人の価値観の“下地”となっている神道や仏教的な死生観では、脳死と臓器提供に対する抵抗があるといえます。日本では、ご遺体に対して特別な思いを持ち、強い自覚はなくても、死後も身体、精神、魂が統合された全体を保たなければいけないといった感覚を抱いている人が多く、亡骸を「魂の入れ物」と考えるキリスト教の考え方とは異なっています。また、移植手術を受けるためには、臓器の提供を受けなければなりません。つまり、自分の命が助かるために誰かが亡くなるのを待つということになります。こうした感情は患者さんにとって想像以上に苦しいものでしょう。

 こうした日本人に根付いている価値観に加え、先ほどお話ししたように手術一回一回、患者さん一人一人に対し、莫大な医療費がかかります。この医療費はもちろん国民から集められた税金で成り立っています。つまり、心臓移植は誰かの「死」と「お金」の両方を期待しなければならない医療とも考えられるのです。

「すべての国民に一定水準以上の平等な治療を提供する」という理念を原則にしている日本の国民皆保険制度をこれからも維持していくためにも、日本における心臓移植という医療の立ち位置をあらためて議論する必要があると考えます。

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