(11)東京で連絡を受けるだけ…じわじわと気持ちが追い詰められていった

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 しかし、どの報告でも母の心身の状態がいいようには思えないのだ。母の状態を想像することしかできない私は、心から疲れてしまった。自分が実家に帰って母の世話をすることができず、叔母たちに頼っているという罪悪感にも苦しんだ。

 叔母たちは元気がいいといっても80歳前後。当然、それぞれの家庭もあり事情も抱えている。それでも献身的に実家に通って母の面倒を見てくれるのは、どういうことなのだろう。

 私は、この姉妹の絆に圧倒されていた。決して裕福ではない農家に生まれ育った彼女たちは、多くの苦労を一緒に乗り越えてきたことだろう。80代になってなお、そのつながりが続いていることに、兄弟姉妹のいない私はうらやましさも感じるのだった。

 それは同時に、私自身が年を取ったとき、助けてくれる人はいないという予告でもあった。友達づきあいもそれなりにしてきた母だったが、今、このような状態になっていることを知っている人もいないだろう。知ったところで、誰かが具体的な手伝いをしてくれるとも思えない。


 要介護認定を受ける前と、医療にアクセスする前のこういった空白期間をどう乗り切ればいいのだろうと考えながら、東京で連絡を受けるだけの私の気持ちはじわじわと追い詰められていった。 (つづく)

▽如月サラ エッセイスト。東京で猫5匹と暮らす。認知症の熊本の母親を遠距離介護中。著書に父親の孤独死の顛末をつづった「父がひとりで死んでいた」。

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