よくある介護の悩み(7)徘徊を繰り返す場合はどう対処すればいい?
海外には認知症の患者さんが特定のショッピングモールの敷地内を自由に歩き回って買い物できるように整備されている地域があります。そうした環境を医療機関や施設、自治体や地域が一体になって、日本でもつくり上げていくのです。
もちろん、考えなければならない課題はたくさんあります。徘徊を繰り返す患者さんは、ひとりで歩き回るだけなら問題ありませんが、他人の部屋に入って、その人の私物を持って行ってしまったり、冷蔵庫の中のものを食べてしまったりといったさまざまな問題行動を起こします。
徘徊中にコンビニに立ち寄り、レジの横で販売されているおでんを勝手に口にして、食べかけのままおでん鍋に戻すといった行動を繰り返し、すべてのおでんが売り物にならなくなってしまったため、家族がすべて買い取ることになったというトラブルも実際に耳にしました。
そうした問題行動をすべて許してあげる街づくりとなると、経済的にも衛生的にもハードルはかなり高いといえます。店舗の営業のために行政からの補助金の給付は不可欠です。また病状のレベルによってはもちろん、“認知症にやさしい街”で暮らせる人と、問題行動が多いため施設に入らなければならない人に分かれると考えられます。
以前にお話しした環境調整と関わり方を実践して、治療を行っても問題行動が改善せず、犯罪や事故を起こす可能性が高い場合、現時点ではやはり、施設などの限られた徘徊環境で生活を送っていただく選択をすることになるといえるでしょう。