セカンドライフを楽しみたいなら…シニア夫婦に横たわる“溝”の解決は早めがベター
“言った言わない論争”で謝らず
これらについて夫の回答率が妻より低いということは、夫はこれらを軽んじているということにもなる。
妻にとって、目の前の夫が「誠実ではない」「包容力がない」「知識・教養がない」「浮気する」「経済力がない」「束縛する」タイプなのかもしれない。「浮気」や「経済力」はいわずもがなだが、ほかの4つはどんな言動が夫婦の溝を生むのか。
「お互いに仕事や目の前のことに気が向いているときに何かを言われると、頭に残らず、改めて確認されたときに、“言った言わない、聞いた聞いていない論争”になりがちです。どの夫婦にもあることですが、誠実でない夫は、妻が言っていないことを『オマエが言った』と決めつけ、妻に言われながら忘れたことは『聞いていない』とトボケます。それでケンカになって、自分に非があることが何となくわかっても、そういう夫は絶対に謝りません。それでいてシニア夫は、家事の中でも食事がとにかくできないので、妻に用事があると、お構いなしに『オレの食事はどうする?』と外出前の忙しいときに自分の食事を用意させようとします。で、食事ができると、妻に『だれと出かけるのか?』『なんで』と質問責めにして、妻を追い込むのは束縛そのものです」
■勉強はできてもマナーが悪いと
夫に知識や教養があっても、妻に嫌がられるケースがあるという。
「たとえば、一緒にクイズ番組を見ていて、妻が答えた問題を自分が答えられないとき、『オマエの得意分野だからな。きょうの問題は、分野が偏り過ぎだろ』などと自分の負けを棚に上げるようなタイプが一つ。もう一つは、勉強はできても冠婚葬祭の作法やマナーなどに疎いタイプです。私の相談者の再婚した夫が後者で、夫が神前式での三々九度を知らず、ビックリしたといいます。結婚後は、女性の実家から贈り物などが届いても、もらうだけでお返しをしようとしなかったそうで、女性が友人と旅行に出かける前にお土産について聞いたところ『いらない』と即答。『その方がムダなカネを使わずに済むから合理的だろ』と付け加えたそうですから、嫌われて当然でしょう。喜びを分かち合えないのが、教養のない夫です」
良い部分も悪い部分も含めて相手のすべてを受け入れることが、包容力のある人の対応だ。ところが、妻との溝に気づかない夫は、疲れた妻をねぎらうことなく、「昼寝できるほど楽な仕事でいいな」などと相手をさげすむ。常に自分が有利な立場を演出して、そんな言動が修正されずに夫婦関係を継続してきたから、夫婦の溝に気づかない。溝の修復は夫の対応にかかっているという。
「そういう夫は、ステータスや格差への意識が過剰に強く、それを夫婦関係にも持ち込む傾向が強い。仕事や会社はそれでも成立するかもしれませんが、夫婦に上下関係を作ったら絶対に成り立ちません。自分勝手な夫婦間ステータスに満足している夫は、家庭での格差意識を捨てることが夫婦の溝を解消するのに不可欠です」
シニアになってからのセカンドライフは、現役時代と違って、パートナーと過ごす時間がグンと増える。夫婦の溝は、早めに埋めておくことが無難だろう。