楽天は2026年にサービス開始…「衛星との直接通信」で気になる8つの疑問
「船の上や飛行機の中から直接つながることになります」──楽天モバイルが2026年内に衛星と携帯電話との直接通信サービスを目指すと発表したことを受け、楽天グループの三木谷浩史社長はこう語っている。能登半島地震でも使われた衛星通信は、世界中が注目する技術だ。通信品質や実現可能性は、どうなのか。ITジャーナリストの井上トシユキ氏に聞いた。
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Q.そもそもどんな技術なのか?
「衛星通信を行うにはいくつかの技術があって、衛星電話の主流は上空550キロ付近を軌道とする低軌道衛星を使います。その軌道になるべく多くの衛星を打ち上げて、携帯端末と安定的に電波を送受信するのです。イーロン・マスク氏が創業した宇宙企業スペースXが手掛けるスターリンクもこの技術を使用しています」
BSをはじめとする衛星放送は、赤道上空約3万6000キロに打ち上げられた衛星と通信することで動画を視聴できる。
Q.能登半島地震で通信障害の解消に役立った技術も同じ仕組み?
「はい、同じです。KDDIはスペースXと提携していて、今回の地震で通信障害が広がったエリアにスターリンクのアンテナを設置して、基地局の代わりとして使用しました」
アンテナは小型で軽量なため、車が入れない地域にはKDDIスタッフが人力で運び、アンテナを設置し、Wi-Fi環境を整え、高速通信が可能になった。アンテナ1台で120台ほどの端末を接続できるという。
Q.通信の品質はどうなのか?
「たとえばBSなどの衛星放送を見ているとき、雷雨や台風などの豪雨で画像が乱れた経験をしたことがあると思います。その原因は、豪雨で電波が弱められるためです。衛星電話も、天候によっては通信や通話が難しくなる可能性があります。また、衛星電話の電波は直進性で、端末や衛星との間に建物をはじめ遮蔽物があると、通信できません。高層ビルが多い都市部でつながりにくく、屋内で使用するには別に屋内用アンテナが必要です」
能登半島地震で利用されたスターリンクも、衛星と携帯との直接通信ではなく、アンテナを経由した。KDDIは能登半島地震の前からスターリンクを基地局やWi-Fiスポットとして活用していて、この経験が大規模災害での活用に役立ったという。