不謹慎にもほどがある!「京都大学ボヘミアン」の泣ける笑える青春…話題ドラマ「ふてほど」と同時代
1985年と今では何が根本的に違うのか?
改めて著者のフジーこと藤井氏に当時の情熱を聞いた。
「1985年、86年はいま話題のドラマ『不適切にもほどがある!』の舞台とも重なりますが、あの頃はバブル景気の入り口でキラキラした時代でした。『夕やけニャンニャン』の放送が始まり、『カフェバー』がはやっていた。原田知世さんの『私をスキーに連れてって』(1987年)が公開されるや、スキーブームもやって来ました。しかし、ボヘのメンバーはテニスやスキーのノリに乗れない連中の集まりで、僕はディスコに行っても踊れず、食べ放題のスパゲティをむさぼるように食べていました。4回生で初めてスキーに行ったが、スキーウエアはカッパでした(苦笑)」
今の時代は「豊かになる」ことが中心で、自己責任という個人主義が大手を振っている。
「学生の頃、豊かになるなんてことは考えなかった。試しに、新聞社を中途退社した53歳(2020年)の頃に1カ月間だけ学生の頃と同じ4万円で生活できるかやってみました。実際に4万円でも暮らせたのですが、ちっとも楽しくない。自分も変わってしまったのかもしれません。あの頃は『いいちこ』で満足だったし、『だるま』があれば有頂天。本の『京都大学ボヘミアン物語』は確かにくだらない話も多いし、読者の役に立たないとも思ったりしますが、世の中がすべて正論ばかりでは息苦しいでしょう。失敗でいいからやってみて、それを認める世の中であって欲しいという願いも込められています」
お金では買えない仲間との共通の恥が宝だ。ちなみに、フナムシを食べたメンバーは今では大企業の幹部や弁護士の大先生に出世しているという。
▽藤井満(ふじい・みつる) 1966年生まれ。京都大学文学部卒。元朝日新聞記者。著書に「僕のコーチはがんの妻」(KADOKAWA)、「北陸の海辺自転車紀行」(あっぷる出版社)、「能登の里人ものがたり」(アットワークス)などがある。