『ラブ トランジット』S2が刺さる人、刺さらない人。“自分ごと”として楽しむ秘訣は?
他の“恋リア”よりずっとずっと濃い
恋愛リアリティーショー『ラブ トランジット』シーズン2(Amazon Prime Video)がスタートして話題です。
別れたカップル5組が1カ月の共同生活を送るという生々しい番組、元サヤか新しい恋かに揺れる内容が、なぜ多くの人を夢中にさせるのでしょうか。
【内藤みかのあたらしいのがお好き】
他のほとんどの恋愛リアリティーは、見知らぬ男女が初めて出会うところからスタートするのですが、『ラブ トランジット』は違います。
別れた元恋人と一緒に恋愛リアリティーに参加するので、参加者の中に、昔愛し合った人がいるのです。元恋人との会話には「あの時のあなたはこうだったね」などと振り返る内容もたびたび登場します。
他の恋リアでは、初回に「はじめまして〜」とフレッシュに挨拶を交わすものですが、『ラブ トランジット』は初回から泣き出す人が出るほど濃厚なのです。
修羅場が生々しすぎる
この番組のスゴさは、しばしば本音がモロ見えしてしまうところ。他の恋リアではまだ恋愛以前の猫をかぶった状態なので、嫉妬をしても上手に隠したり、怒っていても相手にうまく伝えられなかったりと、本当の気持ちをオブラートに包んでいるところがあります。視聴者はそのもどかしさにドラマを感じるのです。
しかし『ラブ トランジット』は違います! 元恋人が、他の誰かと新しい恋を始めようとしていたら、焦りや嫉妬の表情を隠すことができません。また、何かの弾みで過去の傷がウズき、「あなたはいつもそうだった!」と口論が勃発することも。
圧倒的に“泣きシーン”が多いのも見ごたえ
過去のドロドロの感情が突如として顔を出し、修羅の表情が画面に大映しになる。そんな番組はなかなかないので、観ているこちらも目が離せません。復縁するの? それとも新しい人と恋をするの? どっち? と続きが気になって仕方ありません。
昔の恋人が他の人と仲良くしているのを見て、それにストップをかけたくなり、自分の本当の気持ちに気づき、涙したり。または、昔の恋人が優しい言葉をかけてくれたら、嬉しくなって涙ぐんだり…。
『ラブ トランジット』は他の恋リアに比べて圧倒的に泣きシーンが多いのも、見ごたえアリなのです。
観ている側も昔の恋人を思い出す
そして出演者が涙する様子を見て、気持ちが分かりすぎて、観ているこちら側も昔の恋人を思い出し、もらい泣きすることさえあります。
自分がもし元恋人に再会できたらどうするだろうという想像までさせられるし、本当に深い番組です。要所要所に彼らの過去画像が挟まってくるのも、切なさに追い打ちをかけてくるんですよね。
ただ、熱く燃える恋をした経験がないと『ラブ トランジット』はディープすぎるらしく、「この人たちはどうしてそんなに過去を引きずってるの?」と不思議に感じる人もいるようです。
もしかしたら、この番組が刺さる人は、忘れられない誰かが心にいる可能性が高いのかも。
復縁か、新しい恋か…
『ラブ トランジット』シーズン2でも、人物相関図はかなり複雑です。まず、誰が誰の元恋人なのかという過去の関係、そして今、誰が誰を好きなのかというリアルの関係、この2つが絡み合うので、心理を読むのも難しく、謎解きのようで鑑賞しがいがあります。
そして厳しいのは、復縁を望んでも、相手が望んでいないケースがあるということ。そうなるとツラい片想い状態になってしまうのです。恋愛というものは、お互いの合意があって成り立つ関係なのだなと思い知らされます。
10人の出演者は、やがて最後の決断を下すことになります。彼らがどういう愛の形を選んだのか、それぞれの結末を見届けるまでは、こちらの気持ちも落ち着きません。
今シーズンも、彼らの願いが叶うようにと応援しながら、もつれた感情の落ち着き先を見届けたいですね。
(内藤みか/作家)