人口100万人あたりの「梅毒」件数…目立つ岡山、福岡、宮崎、熊本
全国で前年比597件減少も
国立感染症研究所は10日、感染症発生動向調査(IDWR)速報データ第35週(8月27日~9月1日)を発表した。
梅毒の新規感染報告件数は新たに228件が報告され、今年の累計数は9513件となった。前年同期が1万110件だったことから、597件減少したことになる。
累計件数での減少が目立つのは北海道(マイナス153件)、広島(同115件)、大阪(同93件)、東京(同73件)、愛知(55件)。逆に増加が目立つのは神奈川(プラス64件)、岡山(同38件)、茨城(同36件)、栃木(同15件)、大分(同15件)。
2022年の都道府県別人口(総数)を利用した第35週時点での100万人あたりの新規報告件数でみると、東京(172.1件)が最も多く、以下大阪(144.8件)、岡山(123.5件)、福岡(107.1件)、宮崎(98.8件)、熊本(87.3件)、香川(74.9件)、茨城(72.8件)、愛媛(72.7件)だった。一方で北海道は63.4人と少なかった。
性感染症の専門医で「プライベートケアクリニック東京」新宿院の尾上泰彦院長が言う。
「全国的に減少傾向とはいえ、実際の新規感染者数は報告数の数倍との推測もあり、油断は禁物です。私が気にしているのは人口100万人あたりのデータです。東京では過去最多の昨年の第35週の177.3件から172.1件と減少しているとはいえ、依然として高いレベルにあり、20代女性と50代までの男性が中心という、“パパ活感染”の構図は変わっていないようです。一方で妊婦の感染も目立つことから歓楽街以外のエリアでの感染拡大が起きていることが懸念されます。その意味で岡山、宮崎、熊本、香川などの地方での感染の広がりが気になります」
梅毒を含めた性感染症は予防に務めることが重要だが、それ以上に大切なことは早期に発見して治療することだと尾上医師は言う。
「用心していても感染することはあります。大事なのはそれに気づいたときにすぐに検査を受けて治療を始めることです。幸い、いまは梅毒の治療法が進歩し、以前のように数週間飲み薬を飲み続けなくても、『ステルイズ』と呼ばれる注射薬により即日治療で完了できるようになりました。また、性交後72時間以内に飲み薬の『Doxy PEP』を内服することで、梅毒を87%、クラミジアを88%、淋病を55%予防するという方法もあります。性交後、異変を感じたら恥ずかしがらずに医療機関に相談しましょう」