著者のコラム一覧
東敬一朗石川県・金沢市「浅ノ川総合病院」薬剤部主任。薬剤師

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

“治療”も気から…「プラセボ」は悪いわけではない

公開日: 更新日:

 みなさんは「プラセボ」という言葉をご存じでしょうか? 日本語だと「偽薬」と訳されることがほとんどで、具体的には有効成分が入っていないクスリのことを意味しています。

 なぜそんなものが存在しているのかというと、人間というのは心の影響を受けやすいからです。実際、有効成分が入っていないはずのプラセボでも、一定数の患者は効果が得られるケースがあります。これを「プラセボ効果」といいます。プラセボがどうして効果を発揮するのかは完全には明らかになってはいませんが、暗示などの心の影響が強いのではと考えられています。

 このプラセボは、世の中に出てくる前に行われる臨床試験によく用いられます。臨床試験では、新しいクスリの安全性だけでなく有効性も確認しなければなりません。よく用いられる方法が二重盲検試験というもので、実際に有効成分が入っているクスリを投与する群と、プラセボを投与する群の2つに無作為に分け、クスリの有効性を確認します。つまり、「プラセボ効果を加味しても、新しいクスリには有効性が確認できたよ」という証明をするのです。事実、臨床試験に参加する患者は、自分が服用・使用しているクスリに有効成分が入っているのか、もしくはプラセボなのかは知らされません。

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