ブックオフグループHD(下)リセール市場の主役に 赤字転落からの逆転劇
直営、FCを合わせ全国で800店舗あるブックオフ。展開するブックオフグループホールディングスの創業は1990年にまでさかのぼる。
書籍は再販価格維持制度の対象。つまり値引き販売ができない商品だ。安く買おうとすると中古書籍を買うしかないが、ブックオフ誕生前の中古本市場は古書店が中心で、店は狭くて暗い。そのため一般の消費者が入るには敷居が高く、利用するのは一部の好事家に限られていた。
その市場にブックオフは、明るく広い店舗で参入した。同時にテレビCMなども積極的に活用、「売りやすい、買いやすい」を前面に打ち出した。
創業者は坂本孝氏。ブックオフを去ったあと、「俺のフレンチ」や「俺のイタリアン」を展開する「俺の」を起業するなど、消費者の需要を素早く見つけることのできるアイデア起業家だった。
坂本氏はブックオフをコンビニのように、誰もが気軽に利用できる店にしようと考えた。それが売り手・買い手それぞれの支持を得て急成長、2004年には東証2部への上場を果たす。
ところがいいことは長く続かない。07年には不正会計があったとして創業者の坂本会長が辞任。その後、タレントの清水国明氏の姉でブックオフパートタイマーだった橋本真由美氏が社長に就任し話題となるが、すでに出版不況が深刻化しており、中古本流通には限界が見えていた。もう一つの柱であった中古CD・DVDも、サブスクなどのストリーミングサービスが広がっていった。その結果が、16年3月期の営業赤字転落だった。
その翌年、堀内康隆氏が社長に就任する。堀内氏はコンサルタントとしてブックオフを担当していたが、そこから引き抜かれて入社していた。
就任後の堀内氏は全国の店舗を回るとともに、大家との家賃交渉など固定費削減に取り組む。同時に中古本、中古CD・DVDに偏っていた事業構造にメスを入れ、リセール市場に本格的に参入していく。
日本のリセール市場は急成長しており、25年には3兆5000億円に達するとみられている。10年前の2.5倍規模だ。その市場を逃す手はない。従来のパッケージメディアにこだわらない商品構成こそ、生き残る道だと堀内氏は考えた。