日本酒ベンチャーClear 生駒龍史社長(1)熊本産「香露」を飲んで衝撃を受ける
創業者の生駒氏は1986年、東京生まれ。日本大学法学部を卒業し、IT企業に就職するが、1年半でサラリーマン人生に別れを告げる。ただし、この段階ではまだ起業を志してはいない。アルバイトを重ね、ウェブを利用したアパレル転売などで生活費を得ていた。要は単なるフリーターだった。
転機が訪れたのは2011年。3月11日に東日本大震災があり、生駒氏はこれからの生き方を考えざるを得なかった。そんな折、家業が酒屋の友人が訪ねてきた。
今、酒屋の経営はどこも厳しい。アルコールを売るには酒販免許が必要だが、以前はそう簡単に取得することはできなかった。ところが規制緩和の結果、コンビニなどでも容易に販売できるようになり、酒屋でアルコールを買う人はむしろ少数派になった。そこで友人は、売り上げを伸ばすために日本酒をウェブ販売できないかと考え、知見のある生駒氏に一緒にやらないかと持ち掛けた。
しかし生駒氏は乗り気ではなかった。理由は簡単で「アルコールはあまり強くない」。なかでも日本酒は「むしろ苦手だった」。今まで飲んできた日本酒は、ビールなどより度数も高く雑味もある。それが嫌で、普段はほとんど口にしなかった。