野党いまだ19選挙区に候補乱立…自民は裏金議員非公認で内輪モメでも“漁夫の利”を与えるのか
「もう選挙区で勝つしかねぇよ!」
裏金議員は比例重複を認めない――衆院選直前、石破首相が唐突に打ち出した一大方針。福島3区から出馬予定の菅家一郎氏はその一報を聞くや、冒頭のように声を荒げたという。7日付の朝日新聞が報じていた。
石破執行部は一部の裏金議員の非公認も決定。9日午前、党本部で選対本部会議を開き、「党員資格停止」処分の3人と「党の役職停止」処分が継続し、政治倫理審査会で弁明していなかった3人に、新たに6人を加え、計12人の非公認を発表した。
追加で非公認になったのは▽菅家一郎氏(福島3)▽中根一幸氏(埼玉6)▽小田原潔氏(東京21)▽細田健一氏(新潟2)▽越智隆雄氏(東京6)▽今村洋史氏(東京9)――。今村氏以外は現職で、越智氏はすでに不出馬を表明していた。
さらに、戒告以上の処分を受けた裏金議員は【別表】の通り。中でも非公認の確率が高いとみられていたのは、菅家氏だ。
「裏金1289万円で役職停止6カ月の処分をくらったうえ、裏金を含む計2615万円を自身が代表の党支部に寄付。所得税控除の税優遇をちゃっかり受けていたことも判明した。すでに返納したとはいえ、裏金原資の税還付は心証が悪い。前回は小選挙区で敗れており、今回は『勝ち目なし』と判断されても仕方ない。追加非公認の最右翼と目されていました」(自民党関係者)
いざ自民の公認を得られず無所属出馬を強いられれば、選挙活動は大きな制限を受ける。同じ選挙区の野党候補は絶好のチャンスだが、軒並み乱立【別表】。きょう解散、15日の公示まで残り6日なのに、一本化は遅々として進まない。
非公認とその可能性がある裏金議員と野党候補の「一騎打ち」は、たった4選挙区。逆に三つ巴の構図が目立ち、裏金2728万円の萩生田元政調会長が立つ東京24区に至っては、維新が追加公認を出す可能性もあり、野党だけで“”四つ巴となりかねない。
■「野党はひとつにまとまる必要がある」
「党の役職停止6カ月」の処分を受けた裏金1408万円の宗清皇一氏は、前回選挙で比例復活。戒告処分で裏金896万円の柴山昌彦氏は次点候補と票差は約6600票、同836万円の関芳弘氏は約9400票とそれぞれ僅差での薄氷の勝利だった。野党がまとまれば勝機を見いだせる。
「今回の騒動で改めて裏金議員に注目が集まり、有権者の『落選』気運はますます高まる。野党がバラバラで、漁夫の利を与えれば失望を買うだけです。非公認の議員は、それこそ死に物狂いで選挙に臨んでくる。だからこそ野党はひとつにまとまる必要がある。特に野党第1党の立憲民主党は身を捨ててでも他党に花を持たせた方がいい」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)
一本化調整について、立憲の小沢一郎総合選挙対策本部長代行は8日、「魔法使いでもない限り、難しいんじゃないか」と語った。諦め顔にはまだ早い。公示まで夜を徹して野党各党は一本化を話し合うべきである。
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世間に白い目を向けられている裏金議員に追い風が吹くわけがないにもかかわらず、野党の候補者一本化は遅々として進まないのは…。●関連記事『【もっと読む】安倍派裏金幹部6人「10.27総選挙」の明と暗…候補乱立の野党は“再選”を許してしまうのか』で詳報している。