熾烈な争い続くも…三振数も激増している「本塁打王」の価値
例外は93年に42本塁打ながら、シーズン最多三振のプロ野球記録を残したブライアント(元近鉄、204三振)ぐらいだ。
■王さんも嘆く選球眼の甘さ
なぜ長距離砲の三振数が激増しているのか。
野球評論家の山崎裕之氏は「選手の三振に対する意識と首脳陣の甘さが問題」とこう続ける。
「私の時代でも元阪急の長池(徳二)さんら多くの長距離打者がいましたが、みな打席では<三振してはいけない、何とかバットに当てよう>という意識が強かった。監督や首脳陣も打者にそういう指導をしていました。ところが今の長距離バッターにはそういう意識や責任感がない。<4打席で1本ホームランを打てばあとは3三振でもいい>という感じです。首脳陣も長距離打者の三振に寛容になり、怒ったり注意もしない。これでは三振が増えるのも当然です」
評論家の高橋善正氏も投手の目線からこう話す。
「昔の長距離バッターは落差のあるカーブやシンカーに対応するため、打席に立つ前にブルペンで目慣らしをしたり、ストライクゾーンの確認を何度もしていた。今の打者でそんなことをしている者はほとんどいない。だから、選球眼が悪い。一発を打ちたい打者ほど体が前に出るから、ボールの見極めができず、ホームベース手前に落ちるワンバウンドのフォークやスプリットにも簡単に手が出て三振をする。先日、王さんと話をした時も、<近頃の選手は2死満塁でも平気でフォークに空振り三振する。見極めようとする能力や意識がない>と嘆いていた。根本的にこうした選手の意識を変えないと、この傾向は続くはずです」
ホームランは野球の「華」。長距離砲の一発が試合の流れを変える効果はあるが、その分、三振が増えていいというわけではない。
30本以上打って本塁打王に輝いたとしても、100三振以上しているバッターは、昔はただの「一発屋」と言われた。決して褒められるようなものではない。