【開幕直前対談】達川光男×仁志敏久 巨神の新監督2人を語る

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2人だけが知る両監督の素顔と資質

 きょう開幕を迎えるプロ野球、今季の最注目は、ともに指導者経験がほとんどないまま伝統球団を率いることになった、巨人高橋由伸監督(40)と阪神金本知憲監督(47)だろう。そこで2人をよく知る巨人OBの仁志敏久氏(44)と元広島監督の達川光男氏(60)に両監督のことを大いに語ってもらった。

■「ワシはカネに恨まれとる」

――達川さんは現役選手としても金本監督と1年間、同じ釜の飯を食べた間柄。99年に広島監督に就任してからは上司と部下の関係にありました。

達川「付き合いは長いけど、ワシはカネ(金本)に恨まれとるからね」

仁志「いきなりですか(笑い)」

達川「いや、ホンマよ。カネは04年に元阪神の三宅秀史さんが持つ(700試合の)連続フルイニング出場の日本記録を更新し、06年にカル・リプケン(の903試合)を抜いて世界記録を達成するわけだけど、そのとき本人から言われたよ。『監督が達川さんじゃなかったら、もっと早く記録を達成できたし、もっと長く記録は続いたはずです』と。冗談半分という口調で顔は笑っとったけど、目はマジじゃった(笑い)。確かにカネの言う通りなんよ」

仁志「記録を見ると金本さんのフルイニング出場は達川さんが監督を務められていた99年の7月21日から始まっています」

達川「それよ。99年に監督に就任して、開幕5試合目にカネをスタメンから外しとるのよ」

仁志「すでに金本さんは主力選手のひとりでしたよね」

達川「年間30本塁打も打率3割もマークしとったよ。前年には4番も打っとった。でも、あの年は開幕から3連敗してね。5番を任せていたカネは開幕4試合で無安打。状態が悪いいうことで、コーチの進言もあって外した。しかも、その日は3番の前田(智徳)が1打席目で自打球を当てて、結局、その裏の守備からカネが試合に出た。そこでカネは3打数2安打と意地を見せた。体はもちろんだけど、気持ちも強い選手やったね。一方、由伸は故障が多かった」

■見た目とは反対の泥くささ

仁志「ボクの2年遅れで98年に入団してきましたが、キャンプで初めて見たときにはもう、『スターだな』と思いました。見た目もそうだし、打撃フォームも視覚的に美しかった。一言で言えば天才です。でも、スマートな見た目とは正反対にプレーは泥くさかった。当時の巨人はチーム構成からいっても、ディフェンスより攻撃に重きが置かれた。そういう中で由伸は守備に対する意識が非常に高く、フェンスやケガを恐れない果敢さがありました。それがケガにつながることもありましたが、そういう由伸が後ろを守ってくれているということが、二塁手のボクには頼もしかった。もし、由伸が内野手だったら、毎日、ユニホームが泥だらけというタイプの選手です。練習量も物凄かった」

達川「カネの鉄人ぶりを表すエピソードは無数にあるけど、その原点になった一言がある。ワシの監督1年目の99年は緒方や江藤、前田ら主力に故障者が続出した。チームもBクラスに低迷。そんなとき、中日戦の試合前練習中に監督の星野(仙一)さんがワシのとこに来て、『タツ、大変じゃの。故障者ばかりで、どうにもならんやろ』と慰めてくれたんじゃね。ちょうどケージの中でカネが打撃練習をしてた。そこで、星野さんがこう続けたんよ。『金本はええのう。金本みたいに丈夫なのばかりだったら監督は苦労せんのになあ。監督からすれば休まずに試合に出る選手が一番いい選手。金本はええ選手じゃ』と」

仁志「星野さんのその一言が鉄人金本さんの原点になったわけですか」

達川「そう、これ、ホントの話よ。それからよ、金本はなにがあっても休まん、と。で、カネは名言を吐いた。『ケガは人に言うけえケガになる。言わんかったらケガにはならん』いうてね。実際に左手首を骨折したのに言わんかったからね」

仁志「由伸の言葉で印象的なものがあります。打者としての由伸は超積極的でした。初球から振っていく。半面、ボール球に手を出して1球で打ち取られるというケースもあります。中には、今の球に手を出しちゃいかんだろう、という人もいましたが、由伸は平然とこう言うんです。『バットが止まらなかった』。つまり、由伸は投手が投げるすべてのボールを仕留めにいってるんです。瞬間的に体が反応し、打てそうだったらそのまま振るし、打てそうになかったらやめる。それができるんだから、やっぱり天才です。スコアラーが集めた相手バッテリーの配球のチャートなどもじっくり見るタイプではなかったですね。打撃に関しては完全に感覚派の天才肌でした」

達川「カネは対照的じゃね。豪快に見えて、繊細できめ細かい。配球を読んで打つタイプよね」

――「ケガは人に言わんかったらケガにはならん」という人と、感覚派の天才打者の下でやることになる選手は大変じゃないですかね。

達川「カネは若い頃、苦手だった左投手を克服するために、オフには知り合いの左利きを探してきて、打ち込みをやっとった。自分がそれだけのことをやってきたから、やるべきことをやらん人間には厳しいよ」

仁志「由伸の場合は金本さんよりさらに若いまだ40歳。指導者経験もほとんどないわけですから、経験豊富なコーチ陣がどれだけサポートしてあげられるか。それに尽きると思います」

達川「いや、しかし、阪神はホンマにチームの雰囲気がガラリと変わったね。キャンプの取材で西岡剛を見て驚いたよ」

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