【開幕直前対談】達川光男×仁志敏久 巨神の新監督2人を語る
金本監督が持つ怖さと由伸監督の末っ子気質
ここから2人の話は一気に盛り上がっていった。
達川「やっぱり、監督で(チームが)締まるいうのはあるよ。まあ、あの西岡(剛)の動きが去年までとはぜんぜん違うよ(笑い)。すごい。キャンプから、ありえんくらい動いとった」
仁志「阪神のキーマンのひとりですよね」
達川「西岡はぜんぜん違う。本気になっとる。目の色がもう、まったく違う。別人よ。ベテランの福留あたりもワシの姿を見つけるなり、走って寄ってきて、『お疲れさまですっ!!!』って、まるで新人のような挨拶をしてきた。金本監督が打ち出している、『超変革』じゃったっけ? チームが根本から変わるような雰囲気は出とった」
仁志「チームリーダーの鳥谷の状態も良さそうですよね」
達川「その辺が、カネ(金本)のかしこいところ。就任以来、なにかあると鳥谷と西岡の名前を出して尻を叩いた。どちらかというと2人はこれまで、首脳陣からも気を使われとった選手。その2人が目の色を変えてやれば、下の人間はやらざるを得ない。それをやらせられるのは、カネのオーラやろね。鳥谷に声を出せ! 当てにいくようなバッティングはするな! 言うてね。カネはいい意味での怖さを持っとる」
■両監督の共通点は?
――一方、由伸監督にはそういう迫力みたいなものは感じられない。見た目も立ち居振る舞いもスマート。盟友の上原(レッドソックス)も「監督としては優しすぎるのが心配」と言っていましたが……。
仁志「クセがなくて素直な人間というのは確か。由伸は3人兄弟の一番下で末っ子気質かな。巨人に入団したときは、主力選手はほとんどが年上でずっと弟分的な感じでした。自己主張はしないタイプ。でも、逆に言えば人の話に聞く耳を持っている。いずれにしろ、由伸を悪く言う人はいない。本当にナイスガイ」
達川「金本と由伸に共通点があるとすれば、人から嫌われない、というとこかね。金本は好き嫌いがハッキリしてるけど、敵はつくらんタイプ。この人と付き合ってもプラスにならんなと思ったら、絶対に付き合わない。だから、ワシとは付き合わんけど、敵にはしない(笑い)。あとは何から何まで対照的よ。入団した時から幹部候補生と見られていた由伸に対し、金本はドラフト4位で2、3年でクビになると言われる選手じゃった」
仁志「前回も話しましたが、打つだけではなく、守備の意識も高い選手でした。二塁のボクと右翼の由伸であうんの呼吸というのがあった。2人の間には絶対に打球を落とさないぞ、という共通意識です。内野と外野の間にポテンと落ちるヒットというのが、投手は最もガクッとくる。目と目、視線のやりとりだけで、どっちが捕るというのができた。その後、いろいろな右翼手と組みましたが、どうしても由伸を基準に考えてしまうので、正直、感覚が合う選手は少なかった。ディフェンスにもしっかり目がいく指揮官になると思います」
▽たつかわ・みつお 1955年、広島県広島市生まれ。広島商、東洋大を経て、1977年のドラフト4位で広島東洋カープ入り。92年の現役引退まで、広島一筋だった。1999年~2000年に広島東洋カープの監督を務める。
▽にし・としひさ 1971年、茨城県古河市生まれ。常総学院高、早大、日本生命を経て、1995年のドラフト2位で巨人入り。横浜ベイスターズ、米独立リーグでも活躍した。2013年に侍ジャパンのコーチに就任。2104年は12歳以下の日本代表の監督も務めた。