横審が稀勢の里を推薦…急ぐ横綱昇進は実力不信の裏返し
その言葉通り、23日に開かれた横綱審議委員会(横審)で稀勢の里を横綱に推薦することが認められた。25日の理事会を経て正式に昇進が決定する。
■「私より国民が期待」という横審
横審の守屋委員長もひどかった。場所前は「(先場所は最後まで)優勝争いをしていない」と厳しかったのが、21日に優勝を決めるや、「(昇進させても)もうよろしいのではないか。(期待しているのは)私というより国民でしょう。千秋楽の結果は重視しなくていい」と、もうメチャクチャだ。
なにが「もうよろしい」かは知らないが、横綱は人情でつくるものではない。
そもそも、横審の内規の昇進基準には「2場所連続優勝、あるいはそれに準ずる成績」とある。横審の委員長が前言を翻し、「世間の声」に流されてどうするのか。
相撲評論家の中澤潔氏は「情けない限りです」と、苦言を呈する。
「横綱審議委員会が設立されたのは67年前の1950年。協会が横綱の大関降格に関するルールを設けたことで、好角家が『そんないい加減な横綱を最初からつくるな!』と猛反発。その結果、つくられたのが横審です。相撲協会のお目付け役として、『強い横綱をつくる』ことが目的のはず。決して相撲協会の応援団ではないし、過去には『まだ時期尚早』と横綱昇進を認めなかった例もあります。少なくとも、稀勢の里にとって今場所は綱とり場所ではなかったはず。重圧をはねのけてこその昇進ではありませんか。本来ならば、ここで待ったをかけるのが横審の仕事ではないですか」