大坂と錦織が活躍する今こそ協会には身を切る改革が必要だ
大坂の場合、女子で二重国籍だったことが想定以上に強化をスムーズにし、これは錦織圭との対比が分かりやすい。
錦織も18歳でツアー初優勝を遂げてからチームを結成した。マイケル・チャンの招聘は5年後とやや遅かったが、立ちはだかったのは伝統の壁――日本テニス協会の念願は、戦前から一貫して男子の国別対抗戦デビスカップで、惜しむらくは、デ杯のエースがグランドスラムの頂点を目指した経験が日本にはなかった。唯一、戦前の佐藤次郎で、このエースが追い込まれて自死したことはよく知られている。
錦織は伝統を背負って5セットマッチを2試合引き受け日本を念願のワールドグループに引き上げた。揚げ句の果て、デ杯とツアーを両立させる知恵や経験がなかったため、故障の連鎖にはまった。
一方、女子の国別対抗戦(フェドカップ)は歴史が浅く、協会も形だけの強化でお茶を濁し、それが伊達公子の早期引退の引き金になった苦い過去さえある。大坂の二重国籍が問題にされず、長期戦略を可能にした背景には、そうした男女の違いが横たわっている。