ソウル五輪の正捕手・古田敦也は「考える力」を持っていた
古田とは88年、89年の2年間しか接することができなかったが、リードを含め、野球に関する質問をよく受けた。
当時の国際大会では、ストライクゾーンが日本と異なる上に、一人一人の審判にクセがあった。外角にボール1個分外れていてもストライクを取ることがよくあり、戸惑うこともあった。古田はそんな中で、事前に収集した対戦相手のデータに加え、試合の中で感じたことを踏まえながら、「こういう意図でこういうリードをしたのですが、どう思いますか?」と、意見を求めてきた。質問は的確で、意識の高さ、頭の良さを感じることが多かった。
国際大会での適応力、対応力にもたけていた。代表選手といってもさまざまで、海外で一度プレーしただけで、その経験を生かしているなと感じる選手もいれば、そうでない選手もいる。海外遠征に行っても漫然と日々を過ごしていると、日本に比べて暑かったとか、食事がおいしかったという表面的な印象しか残らない。国際舞台で自身の最高のパフォーマンスを発揮するためにはどうすべきか、追求する意欲、意識があるかどうかが大切だ。
古田はそうした意欲、意識が高い選手のひとりだった。自分が成長するためには何をすべきか。自身の長所と短所を理解し、どれだけの期間、何をやれば短所をカバーできるかを計算し、考える力があった。