五輪ありきで4月に“鎖国解除” 高まる「変異株」流行リスク
東京五輪・パラリンピックのテスト大会が4月から再開される。飛び込みワールドカップ(4月18~23日)やアーティスティックスイミング(5月1~4日)の五輪最終予選には海外選手が出場予定だ。菅政権は「緊急事態宣言解除後」に大会関係者の新規入国を認める方針である。変異株による「第4波」の懸念は深まるばかりだ。
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菅政権は昨年12月末、感染拡大に伴い新規入国を停止。宣言発令と変異株の拡大を理由に、1月14日からは、11カ国・地域に例外的に認めていたビジネス目的の入国も禁止した。
ところが、来月の五輪テスト大会を前に、この「鎖国」を解くつもりだ。現状では、家族が日本にいる場合など「特段の事情」があれば、例外的に入国を認めている。この例外措置を大会関係者や海外アスリートにも認め、段階的に緩和していくという。さらに、国費留学や教育関係者、インフラ技術者も追加する方針。
肝心の入国後の管理もユルユルだ。入国の際に72時間以内の検査証明書の提出や位置確認アプリのインストール、入国後14日間の自宅待機などを義務付けているものの、健康状態の確認方法は国の「入国者健康確認センター」からの1日1回のビデオ通話。いくら待機を「お願い」しても、それが担保される保証はない。本来、2週間程度、用意した施設に隔離すべきなのに、事実上、“野放し”に近いのだ。西武学園医学技術専門学校東京校校長の中原英臣氏(感染症学)がこう言う。
「五輪を開催するなら感染拡大を抑え込むことが前提条件なのに、五輪ありきで水際対策が行われようとしています。物事の優先順位がまったくアベコベです。全豪オープンでは選手の行動が厳しく制限されましたが、テスト大会や五輪本番では一体どうなるのか。ワクチン接種が進まず、変異株がジワジワと広がっている状況で入国緩和の方針が出てくること自体、本末転倒と言わざるを得ません」