<後>五輪開催中、運転士のコロナ発生なら観客は露頭に迷う
ところが観光バス業界は、今や瀕死の状態だ。たった17日間のために車両と運転士を集めるのは至難の業だ。本当に必要な台数と乗務員が集まるのか。そしてこれまた会期中に輸送バスの乗務員がコロナに感染したらどうなる。
さらに交通規制の問題が出てくる。
無観客でも競技が予定通りなら、バスに関しては事態が変わらないから交通規制も予定通り行われる。東京マラソンで大通りが数時間横断禁止になるだけでコンビニの弁当が届かないとか出前に行けないなどと大騒ぎになったが、何日も通行できない時間が続くと、通院できないとか宅配便が届かないといった生活問題が発生する。そもそも沿道はオリンピック選手が行き交っているのに、その一方でコロナ陽性者は自宅待機などさせるのかという問題も出てこよう。
輸送手段確保の議論をしないのが皇軍以来の「日本の非常事態の伝統」であるとしても、世界ではそれは笑いものだ。もちろん、残された時間とコロナのリスクを考えると通常の考えでは「全然間に合わない」段階なのだが……。また自衛隊頼みなのか。
(鉄道ジャーナリスト・石山政男)