著者のコラム一覧
山田隆道作家

1976年、大阪生まれ。早大卒。「虎がにじんだ夕暮れ」などの小説を執筆する他、プロ野球ファンが高じて「粘着!プロ野球むしかえしニュース」などの野球関連本も多数上梓。各種スポーツ番組のコメンテーターとしても活躍中。

パ投手の150キロ超の剛球を弾き返す新生・阪神打線に感動

公開日: 更新日:

 これ、古くからの虎党の私にとっては隔世の感がある。なにしろ、阪神打線といえば昔から本格派投手にめっぽう弱いところがあった。とにかく速いストレートに振り遅れる、打ち負ける、そんな少々情けない伝統みたいなものがあって、これまで散々苦い思いをしてきた。長身から投げおろすタイプの剛腕型投手が出てくると、かつての阪神ではおなじみだった細身の小兵打者がことごとく押し切られるというシーンがよく見られた。非力、それが貧打にあえぐ阪神打線の課題だった。

 しかし、今は外国人のサンズとマルテだけでなく、大山も佐藤輝も150キロ超のストレートに力負けしていない。小兵タイプの近本光司も中野拓夢もそうだ。2人ともちょこんと当て逃げするようなバッティングではなく、小柄ながら速いストレートを強く打ち返している。パに多いタイプのパワーピッチャーが次々に登場しても、今の阪神打線は安打と凡打を問わず、いずれも強く引っ張った打球を弾き返す。結果ではなく、その打球の質に私は感動したのだ。

 今季の阪神の好調がリーグ屈指の投手力によって支えられているというのは確かに納得できる通説だ。しかし、これまでの阪神になかった新しさという意味では、各打者の強度のほうが目を奪われる。規定打席に到達して打率3割を超えている打者は糸原一人。大山だってまだまだ本調子ではない。だけど、速球派投手にてんで歯が立たなかった過去の貧弱打線はもう遠い昔のようだ。

 今の阪神打線はたとえ結果が出ない日であっても、なんとなく力強さを感じる。ルーキー・佐藤輝なんて、その象徴だ。

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