菅野「メジャー断念&巨人残留」の切迫 原監督が容認から一変、NOの意向に逆らえない
巨人のエース菅野智之(31)が1日、背水のマウンドに臨んだ。
復帰登板となった8月26日の広島戦は、6回で3被弾を含む6安打5失点で5敗目。自身初の4連敗となっていた。この日もダメなら、今季5度目の二軍落ちの可能性もあった。そんな後のない状況で迎えた中5日でのヤクルト戦。不安を一掃する完璧な投球を見せた。
最速151キロの直球とカットボールを効果的に使い、六回2死までノーヒットノーラン投球。塩見に三塁へ内野安打を許したものの、8回108球を投げ、1安打8奪三振で無失点。丸の2ランによる2点を守り切り、「時間がかかったけど、自分らしい投球ができた。ピンチらしいピンチもなかったし、いい投球ができた」と、お立ち台で白い歯を見せた。原監督も「本来の“らしい”投球に見えた。次が楽しみ」とうれしそうだった。
今季は右肘の違和感や再調整により、4度の登録抹消を経験。コンディション不良を理由に東京五輪の侍ジャパンメンバーを辞退するなど、2勝5敗、防御率3.72と苦しんでいた。
コロナ禍で120試合制だった昨季は、開幕投手から13連勝のプロ野球新記録を打ち立て、14勝2敗、防御率1.97で最多勝、最高勝率、MVP。昨オフ、ポスティングシステムを使ってメジャーリーグ挑戦を狙ったものの、条件面で折り合わず、巨人に残留した。菅野はあえて単年契約を結び、海外FA権を取得する今オフに再度メジャーに挑戦したい意向を明かしていたが、状況が変わってきた。
■故障、不振で評価暴落
野球文化学会会長で、米球界に精通する名城大准教授・鈴村裕輔氏は「メジャー球団の菅野に対する評価は当然シビアになるでしょう」とした上で「昨オフなら年俸800万ドル(約8.8億円)~1000万ドル(約11億円)で4年契約も結べたかもしれないが、今オフの挑戦なら長くて3年。1年600万ドル(約6.6億円)~800万ドルになるでしょう。右肘の故障で評価は20~25%下落することが考えられます」と言えば、スポーツライターの友成那智氏も「メジャーでは投手、野手ともに35歳にかかる選手との契約を敬遠する傾向がある。20代のうちにメジャーでサイ・ヤング賞や最多勝などのタイトルを受賞した投手でさえ、30代半ばに差し掛かると各球団の条件提示はシビアになります」と指摘するのだ。
「今年の成績じゃ…」
さらに追い打ちをかけるのが、編成面など「全権」を握る原辰徳監督(63)の意向である。さるチーム関係者がこう証言する。
「昨年の好成績を受けて昨オフは快く送り出してくれた原監督が心変わりして、今オフの挑戦は認めないというのです。要するに“今年の成績じゃ行かせられないな”ということです。といっても、昨年は球団の許可が必要なポスティング移籍。今年は海外FA権を使うので、挑戦しようと思えば、自分の意思でできる。でも、伯父でもある原監督に『NO』と言われて『あと1年待って球団に恩返ししてから考えなさい』と諭されれば、逆らえるはずはありません」
原監督は今年3年契約の最終年を迎えている。巨人は1日現在首位に立っており、もしリーグ3連覇を達成し、来季も続投するようなら、菅野は2022年シーズンも原監督の下で戦うことになる。さる球界関係者は「もしくは、既定路線のようになっている阿部二軍監督が一軍監督に昇格した場合は、エースの残留が原監督からのこれ以上ない“置き土産”になるでしょう。菅野は来月32歳。仮に再来年の23年から挑戦すると、33歳から34歳になる年に海を渡ることになる。これでは単年契約がいいところ。今オフ挑戦できなければ、年齢的にも厳しくなりそうです」。
原監督の意向で、「メジャー断念」「生涯巨人」となる可能性が高まった。