<11>ソルトレークシティー五輪のテロ対策に引っかかった「商売道具」
刃が変に曲がると、滑っているときに音が鳴ったりブレーキがかかって異変にすぐ気付く。エッジは本来ならスタッフもデリケートに扱うべきもの。しかし、長田監督は違った。
■長田監督のサプライズ
私が世界大会に出場し始めた頃、なぜかスケート靴を部屋に持ち帰る監督。
あるときはW杯のレース前日だった。急に上位に食い込む会心の滑り。監督はニヤリとする。私に内緒で刃を1センチほど前に出していたのだ。その分、後ろに重心がいくのでストレートのタイムが格段に増した。それに味をしめたようで、「監督、エッジがおかしいです!」と言っても「大丈夫だ」の一点張りだった。
調整したという先入観がない状態で滑った方がいいという考えらしい。イジったときに決まってかけられる言葉は「どうだ?」。
だんだんその法則が分かるようになり、「またやりました?」と聞いて自分の感覚を伝えると、そこで初めて「そうか、実はココをこうした」と白状した。