1982年日本S第5戦の罪深き「石ころ事件」…先制打のはずが平野の打球が塁審の足に当たり
星野さんが中日の監督に就任した1986年オフ、「監督になったからって休みの日にゴルフに行っちゃいかんって言わないですよね?」と聞くと、「おう、どんどん行けや」との答え。それまでは月曜の移動日が休日になることが多かったが、星野監督の方針で、移動日でも数時間の練習が義務付けられた。シーズン中はオールスター休みの2日間しかないのだから、とてもゴルフどころではなかった。
星野監督はあまり選手を褒めない。それだけに、ちょっと褒められると選手はうれしい。みんなそのためにやっている感じだった。「闘将」と言われるが、実は普段は温厚。星野さんはそういう監督像をつくり上げていた。
星野さんが引退を表明し、私が2年目だった82年、2勝2敗で迎えた西武-中日の日本シリーズ第5戦で、後に語り継がれる「事件」が起こる。
0-0の三回表2死二塁で平野謙が放った打球が一塁線を抜けた。長打コースだ。中日の先制かと思われたが、次の瞬間、信じられないような光景を目の当たりにした。
平野の打球は、なんとライン際で打球の行方を見ていた一塁塁審・村田康一さんの右足に当たると、バウンドを大きく変えて、二塁手・山崎裕之さんの前に転がっていくではないか。名手・山崎さんは素早く三塁に送球し、三塁ベースを回っていた二塁走者・田尾安志さんが戻り切れずにタッチアウトとなった。