大谷翔平の値段は“青天井”に…ナ・リーグDH制導入なら23年FAで「400億円争奪戦」の声
米大リーグの労使交渉が、ようやく再開される。
スポーツ専門局ESPN(電子版)など複数の米メディアが日本時間12日に報じたところによれば、現地13日(日本時間14日)にビデオ会議を行うという。これまでの交渉では年俸総額の上限、収益分配など金銭面に関する主要議題は一向に進展が見られなかったが、MLB側は新たな提案を用意しているとみられる。
年俸総額が規定額を超えた場合のぜいたく税に関して選手会側は現状の2億1000万ドル(約242億円)から2億4500万ドル(約282億円)への引き上げを求めているのに対し、MLB側は2億1400万ドル(約246億円)を主張。両者の間には隔たりがあるだけに、歩み寄りにはまだしばらく時間がかかりそうだが、今回の新労使協定を巡る交渉ではすでに合意に達しているものもある。
これまでア・リーグだけが採用していた指名打者制をナ・リーグにも適用する「ユニバーサルDH」の導入だ。これは投手の負担を減らしたり、長打力のある選手をオーダーに加えて得点力を上げ、ファンの関心を引く試合展開を増やすのが目的。すでにナの各球団は今季の導入に備え、現有戦力、ロックアウト解除後の補強も含めて指名打者の人選に入っている。
DH制の壁に阻まれてきたのが昨季、投打の二刀流としての活躍が認められMVPを受賞したエンゼルス・大谷翔平(27)だ。本拠地アナハイムを含めア・リーグとの試合では登板のない日は指名打者で打線に名を連ねてきたが、DHが使えないナ・リーグの本拠地での試合ではスタメンを外れ、代打出場に限られた。昨季は敵地でのインターリーグは15打席のみだった。本塁打王を争ったロイヤルズ・ぺレス捕手、ブルージェイズ・ゲレロ一塁手と比べて大きなハンディとなった。
打席数増の今季は本塁打量産も
「今季、ユニバーサルDHが導入されれば、大谷の2年越しの本塁打王獲得にプラスになります」とスポーツライターの友成那智氏がこう続ける。
「大谷はアストロズ(昨季打率.250)、アスレチックス(同.226)など同じア・リーグ西地区の球団を苦手にしているうえに、このオフにライバルチームは積極的に投手を補強しています。同地区との対戦では頭打ちとなり、本塁打を量産するのは厳しいと思う。今季、10試合が組まれている敵地でのインターリーグではマーリンズ、フィリーズなど投手力が弱い球団と対戦するだけに、打席数が増す大谷の本塁打数は必然的に増えるのではないか」
「ユニバーサルDH」が大谷にもたらすメリットは今季に限ったことではない。順調なら2023年オフにFA権を取得する大谷の移籍先の選択肢が増えるからだ。ナ・リーグの各球団にとってDHが使えるようになれば、大谷を守備に就かせずに指名打者として起用できるため、二刀流獲得に障壁がなくなる。
大谷の去就を巡っては、これまで多くの米メディアがヤンキース、レッドソックスなどア・リーグ東地区の金満球団を移籍先の候補に挙げてきた。ESPNは、大谷が将来的に5年総額274億円規模の契約を交わすと予想している。
前出の友成氏は「ユニバーサルDHの導入で大谷にさらなる二刀流としての活躍が見込めるため、資金力豊富なナの球団も黙っているはずがありません」という。
「ドジャース、ジャイアンツ、カブス、メッツ、フィリーズといったヤンキースの資金力に対抗できるナの球団が23年オフのFA市場に参戦することでしょう。中でも一昨年に資産家のコーエン氏が買収して以来、積極的な投資を進めているメッツが大谷の獲得に動く可能性はあります。補強に資金を惜しまないコーエン・オーナーなら、大谷に350億~400億円規模のオファーを出すはずです。争奪戦に発展すれば、大谷の値段は青天井になるのではないか」
インターリーグでも打席に立てるようになり、23年オフは大型契約でのFA移籍も不可能ではない。このオフの労使交渉の勝者は大谷ということになりそうだ。