山本由伸が直訴していたメジャー挑戦は23年オフ 元オリ投手コーチ指摘する「2年間の課題」

公開日: 更新日:

「今季はオリックスでプレーするようですが、メジャー挑戦の意志はかなり固いようです」

 球団OBがこう言うのは、昨季パ・リーグMVPなどタイトルを総なめにしたオリックスの山本由伸(23)のことだ。

 球団との契約更改はいまだ行われていない。今月中にも交渉のテーブルに着く可能性はあるが、前出のOBによれば、山本は球団に今オフのポスティングによるメジャー挑戦を直訴していたという。

■25歳ルールが足かせ

「しかし、球団はクビを縦に振らなかった。昨季、25年ぶりにリーグ優勝を果たした最大の功労者ではあるものの、山本はプロ5年目を終えたばかり。2年目以降、主力として活躍しているとはいえ、2ケタ勝利を挙げたのは昨季(18勝)のみです。今季限りで勇退する宮内オーナーが主砲の吉田正とともに、『ずっとチームにいるという前提でいる』と話したように、悲願の日本一達成と常勝チームをつくるためにもまだまだ力になってもらわなければいけませんから」

 しかも、山本はMLBが規定する「25歳未満かつNPB在籍6年未満」の「25歳ルール」に引っかかるため、マイナー契約しか結べない。

「2017年オフに日本ハムからエンゼルスへ移籍した大谷翔平はその年に制定された『25歳ルール』によってマイナー契約を結びましたが、譲渡金は従来通りで、日本ハムは2000万ドル(約23億円)を受け取りました。しかし、現在は譲渡金のルールが変わり、マイナー契約の場合は契約総額の25%に過ぎない。契約金は年俸と合わせて最大6億円程度に抑えられるため、球団には1億5000万円ほどしか入ってこない。山本のメジャー契約が可能になる来年23年オフに、ポスティングを容認する方向で話が進みそうです」(前出のOB)

今季、来季とパフォーマンスを継続できるかがカギ

 仮に24年シーズンからメジャーでプレーすることになれば、山本はその年に26歳を迎える。これはダルビッシュ(パドレス)や田中将大楽天)のメジャー1年目と同じ年齢。ダルはレンジャーズと譲渡金約5170万ドルプラス6年総額6000万ドルの計1.117億ドル(約130億円)、田中はヤンキースと入札金2000万ドルプラス7年総額1.55億ドルの計1.75億ドル(約200億円)とそれぞれ超大型契約を結んでいるだけに、山本も「少なくとも5年50億円以上の大型契約になるのは間違いない」との声もある。

「山本を巡っては、大半のメジャー球団が調査を継続している。マエケン(ツインズ)のような多彩な変化球を操り、それ以上の球速、球威もある。昨年の東京五輪の活躍もさることながら、23年春には第5回WBCが予定されている。海外の強豪国が集まり、よりレベルが高いステージで活躍すれば評価はさらに上がるはず。その一方で、メジャー関係者からは『メジャーでは、山本は身長178センチと小さい部類に入る。過去に何度か脇腹を痛めるなど、独特で体への負担が大きく見えるフォームであと何年投げられるのか、ボールに特筆した角度がなくても通用するのか、しっかりと見極めないといけない』という話も聞きました」(放送関係者)

 ロッテや米インディアンスで活躍した元オリックス投手コーチの小林雅英氏は、そんな山本をどう見ているのか。「現時点で日本のトップクラスの能力を持った投手」と前置きした上で、こう話す。

「志が高い方がよりレベルアップにもつながるでしょうし、今季、どういうパフォーマンスを発揮するか楽しみにしています。先発に転向した19年に最優秀防御率、20年に最多奪三振のタイトルを獲得していますが、プロ5年間で年間通して最後までローテを守り、2ケタ勝利を挙げたのは昨季が初めて。中には、『昨年しか活躍していない、隔年でしか活躍できない投手もいる』と見ている人もいると思います。昔から『先発は3年間、2ケタ勝って一流』と言いますからね。ただ、勝利数はチーム成績に左右される。山本の投球フォームは独特で他の人がマネできないものですから、体への負担などを含め、昨年のパフォーマンスを今季、来季と継続できるのか。まずは今季、ケガなどで離脱することなく、年間通して高いレベルで安定した投球ができるかどうかが大事になるでしょう」

■「日本人独特の器用さはメジャーで武器になる」

 さらに小林氏が続ける。

「山本の変化球はカットやフォークなど多彩かつ精度が高いですし、しっかりしたボールの軌道で勝負できている。メジャーではまず、環境にアジャストすることが大切。東京五輪は日本開催であり、使用球も比較的、日本の公式球に近かった。メジャー球やマウンド、言葉や食事の違いはもちろん、物おじせず、周囲に流されない性格面も含めて適応できれば、期待できます。身長やボールの角度については、私も182センチでそれほど大きくなかったですけど、日本人独特の器用さ、丁寧さは武器になります。一つ一つのボールの精度に加えて、野球脳を駆使し、同じ球種でも違う投げ方をするなど、ボールの生かし方次第で十分に補えると思います」

 今年から2年間、堂々たる結果を残し、胸を張って海を渡ることができるか──。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動