著者のコラム一覧
鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

ジャイアンツのキャプラー監督は国歌斉唱拒否 選手や指導者が社会問題に関わることの是非

公開日: 更新日:

■社会の在り方を反映

 こうした背景を考えれば、スポーツ選手が例えば人種差別問題について発言し、いわゆる「ブラック・ライブズ・マター」問題に関連して国歌斉唱の際に片膝をつくといった行動をとることも不思議ではないだろう。

 最近でもジャイアンツ監督のゲーブ・キャプラーが、銃規制問題が遅々として進まないことに抗議する形で試合開始前の国歌斉唱に参加しないなど、選手だけでなく指導者も社会問題に対して積極的に関わっていると言える。これに対し、日本においては、一部の選手が社会問題や政治的な発言をするものの、特に野球の場合には、野球に直接かかわる事柄以外で何らかの主張を行う光景は皆無に近い。

 もちろん、われわれ一人一人、主義主張は異なる。この点は、国の違いやスポーツ選手であるか否かを問わない事実である。

 しかし、たとえ選手が何らかの意見を持っているとしても、自らの考えを主張することはスポーツ選手に求められる行動ではなく、選手は競技に集中すべきだとする見方が日本の社会では多数を占めている。「プロ野球選手なのによくそんな問題を知っている」「選手はプレーだけすればいい」といった類いの発言や、さまざまな問題への発言を嫌がるのは、選手自身ではなくわれわれ自身に他ならない。

 その意味で、選手や指導者の政治的な言動の有無は、日米それぞれの社会のスポーツに対する見方を反映しているのである。

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