FIFA会長が参加32カ国に送った手紙「今はサッカーだけに集中しよう」の逆効果
これまでカタールのクレージーさを語ってきたけど、4年前に初めて訪れた時と比べれば、状況はだいぶ良くなっている。
雇用主が労働者の全ての権限を持つ「カファラ制度」は廃止になったし、中東で初めて「最低賃金」も決められた。まだまだ十分じゃないけど、それなりに進歩はしているみたい。
国交を断絶していた周辺諸国とは、ホテル不足解消のためとはいえ、多くの飛行機を飛ばすことで合意したし、国交のなかったイスラエルからは今回1万6000人を受け入れるという。これは取りも直さず、サッカーの力! W杯の力! に他ならない。
ボクが思うに一番の理想は、W杯を機にカタールが自国の人権問題について真剣に考えてくれること。それこそが最高の遺産だと思うよ。
▽翻訳=利根川晶子(とねがわ・あきこ) 埼玉県出身。通訳・翻訳家。82年W杯を制したイタリア代表のMFタルデッリの雄叫びに魅せられ、89年からローマ在住。90年イタリアW杯を目の当たりにしながらセリアAに傾倒した。サッカー関連記事の取材・執筆、サッカー番組やイベントで翻訳・通訳を手がける。「カカから日本のサッカー少年へ73のメッセージ」「ゴールこそ、すべて スキラッチ自伝」「ザッケローニ 新たなる挑戦」など著書・訳書多数。