村上宗隆の飛距離の源は体の後ろ側の押し込みと足の裏の「地面反力」の強さ
パワーを軸足に蓄えて…
⑧は左足全体が着いた状態から体をねじろうとしているため、パワーを軸足に蓄えられている。
ステップした⑩までのインパクトにかけて、両足で踏ん張れている。全身のパワーを上半身に伝えることができている。
そして最大の特徴は⑦⑧で打ちにいった際にステップして少し曲がっている右膝が、⑪にくるまでにピンと伸びているところ。右足の踏ん張りと足の裏で地面を押し返す力が強いことが分かる。これを「地面反力」といい、これが強いと打球が飛ぶというデータがある。右投げ左打ちのため、左足、左腰、そして左手でボールを押し込めないと逆方向へ本塁打はできない。体の後ろ側の押し込みが強いのも特徴だ。
⑪からフォロースルーに入る。手首を返してこねるような形になると打球は上がらないが、バットのヘッドが手首より上にあり、立ち気味である。さらに押し込むようにヘッドが使え、手首を押さえ込むようにしているので速球に負けない。普通、少しは頭が前に出るものだが、地面からの力を右足で受け止め、バットを投手方向へ走らせる技術があるのも、長距離打者の特徴だ。頭と重心を後ろに残し、突っ込んでいない。体全体が「人」の字の形のように見えるのは、打球を飛ばすための理想形である。
昨季も128三振を喫したように三振を恐れない。これは高卒2年目だった19年、12球団ワーストの184三振を喫しても、スイングを小さくさせることなく、我慢して使い続けた当時のヤクルト・小川淳司監督の功績だろう。令和の三冠王は、日本中に09年以来の歓喜の渦をもたらしてくれると期待している。(秦真司)