村上宗隆の飛距離の源は体の後ろ側の押し込みと足の裏の「地面反力」の強さ
注目度では大谷、ダルビッシュらの大リーガーに劣るかもしれない。だが、日本球界が誇るこの投打の柱も間違いなくワールドクラス。昨季2年連続の投手4冠を果たしたオリックスの山本由伸(24)と、日本人最多のシーズン56本塁打をマークして史上最年少の三冠王に輝いたヤクルトの村上宗隆(23)だ。野村ヤクルトの黄金時代を強打で支えた元中日、巨人コーチの秦真司氏が村上のフォームを分析した。
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写真は昨年10月の日本シリーズ時のものだ。昨季は史上初の5打席連続本塁打に、日本選手最多で歴代2位のシーズン56本塁打。打率.318、134打点で史上最年少の三冠王に輝いた。遠くに飛ばせる飛距離はもちろん、打率も残せなくては三冠王は取れない。
2021年までと比べてグリップの位置が変わった。以前は耳の位置にあったが、①で弓を引くように捕手寄りに構えるようになった。インパクトまでの距離が取れるため、飛距離は出る。体重を後ろの左足に6、右足に4くらいの比重で待ち、すっと右足を上げる。
①~③のテイクバックで股関節のあたりのズボンにシワが入っている。力をためられている証拠で、このねじれが爆発的なパワーを生む。軸足の左足がほぼ動いていない。
足を上げてタイミングを取り、④~⑥のステップではこちらも左膝、頭、右肩が動いていない。普通はある程度スエー(前へ体重移動)してしまうため、なかなかできないことだ。ブレが少ないことでミート率も上がる。
⑥で踏み出した右足とグリップの距離が離れている。「割れ」というが、右肘をしっかり張れていることもパワーを伝えることができる要因だ。これは長距離打者特有のもので、打球が遠くへ飛ぶ秘訣である。
①~⑦の左膝の向きが真っすぐ正面を向いている。力を逃がさず、軸足に力をためている状態で自分のポイントまで我慢できているため、変化球にも対応できる。
⑦でトップの位置がしっかり決まっているのもいい打者の条件だ。ここにくるまでヒッチやコックといったグリップ周りの余計な動きが一切ないため、ボールへの対応力が上がり、いつでも打てる状態がつくれている。
⑥~⑦で右足親指の母指球から地面に着地しているが、つま先が投手の方向に開くことなく、45度をキープしている。ここから体をねじる動作が始まり、右足が地面に着いてもまだ左足が動いていない。