大谷翔平の疲労蓄積を心配する声続々…常人離れのタフネスを支える肉体とメンタル
侍Jナインが驚嘆した柔軟性
そんな大谷を支えているのは、徹底した食事制限を含めた体調管理に加え、天性のカラダの柔軟性だ。
大谷は今年のキャンプインの際、体重は昨年同時期と同じ102キロとしつつも、「毎年改善するところはあると思う。(ウエートトレーニングで)挙げる重量、体の強さは年々上がっていると思うので」と、さらなる肉体強化に努めたことを明かしていた。実際、昨年よりもカラダが一回りほど大きくなったと指摘する関係者は少なくない。球界OBが言う。
「大谷はそれでいて、花巻東高時代から一貫して肩甲骨や股関節など、野球選手にとって重要な部分の柔軟性が非常に高く、これが身体能力の高さにつながっている。過去には左右の肩甲骨がくっつく姿を何度も披露し、WBCのときも常に両足を大きく開いてストレッチしていた。
カラダのしなやかさはあのイチローと双璧で、欧米人のメジャーリーガーとも体つきが違う。侍ジャパンの同僚選手も『筋肉がハンパないにもかかわらず、カラダに全く硬さがない。欧米人のメジャーリーガーにはないカラダ。だからこそ高度なパフォーマンスを発揮できるし、ケガもしづらいのでしょう』と、目を白黒させていました」
しかも大谷は精神面の強さも常人の域を超えている。
18年に右肘の靱帯損傷が判明し、投手を断念した後も打者としてプレーし続けた。同年オフにトミー・ジョン手術を受け翌19年にはリハビリ中にもかかわらず、打者として試合に出たこともしかりだ。
まして今季は、オフにFA権を取得する大事な一年。WBCの世界一で改めて勝つことの喜びを実感し、ヒリヒリした9月を迎えることも大きなモチベーションにしている。多少の無理を無理と思わない状況にあるといっていい。
知らず知らずのうちにオーバーワーク状態になっていても何ら不思議ではない。実際、大谷とともにWBCに出場した日本人選手の中には、故障や不振に苦しむ選手が少なくない。山田哲人(ヤクルト)や山川穂高(西武)、宇田川優希(オリックス)らが故障やコンディション不良で離脱。村上宗隆(ヤクルト)らも、不振に苦しんでいる。「燃え尽き症候群」を自覚している選手もいるくらいだ。
今季は25日現在で162試合中23試合を終えたばかり。シーズンを乗り切るのが先か、カラダが悲鳴を上げるのが先か……。その大谷は同日、本拠地アナハイムでのアスレチックス戦に「3番・DH」で出場し、4打数1安打1得点1三振だった。
この日は好感度がさらに増した。第1打席でカウント1ボールからの相手先発左腕ワルディチェックの2球目の変化球がすっぽ抜けて大谷の頭部へ。大谷は間一髪、かわして事なきを得た。
ワルディチェックは3日のア軍戦で今季1号を放った相手だ。「報復死球」かと色めき立つ自軍ベンチを大谷は制するように手を振ると、捕手のア軍ランゲリアーズには笑顔を見せ、球場の雰囲気を和ませた。結局、この打席はカウント2-3からの6球目をファウルにした際、捕手のミットがバットに当たり打撃妨害で出塁したが、けん制で刺された。
5点を追う六回無死一塁から一塁線を破る二塁打を放って好機を演出。この回、一挙5点を奪う猛攻を呼び込んだ。
見せ場は同点の九回にも訪れた。一発出れば、サヨナラ勝ちに場面で、大谷が放った当たりは左翼への鋭い当たり。本拠地のファンを沸かせたがポール際で切れてファウルとなり、最後は中飛に倒れてサヨナラ機を逃した。
試合は延長の末、10-11で競り負け、同じア・リーグ西地区最下位のア軍相手に痛い星を落とした。