女子陸上・田中希実「もうダメかも…」と弱音 母が明かすプロ転向直後の知られざる挫折
■試合を思い返しては涙を流す数日間
その時が訪れたのはプロ転向直後の4月8日に行われた金栗記念大会・女子1500メートルだった。結果は2位。傍からすれば上々の成績に見えるが、本人にとってはまったくそうではなかった。
「あの時の落ち込みようは凄まじかったです。数日間は試合を思い返しては涙を流しているような感じで。『私はもうダメかも……』『これ以上、上は目指せないかもしれない』などと繰り返していました。プロ転向してからすぐのことだったので、余計に堪えたのだと思います」(千洋さん)
ドン底から復活できたのもまた、プロ転向が強く関係している。昨年までとは違い、自身が望めば実業団や陸上強豪大学の男子などと合同練習をできるようになった。千洋さんが言う。
「金栗記念大会から少し経った時、もともと約束していた実業団選手との練習をキャンセルしようか迷っていたようですが、『やっぱり逃げたくない』と。一緒に練習できたことで徐々に前向きな気持ちになったようです。練習環境を自由に選べるのは最大のメリットになっています。先日は陸上系ユーチューバーさんと一緒にトレーニングしたり、6月は2週間ほどケニアで合宿もしていました。ケニアにとても惹かれているようで、早くもまた今秋に合宿することを計画しているほどです」
弱冠23歳の陸上界のエースは、我々には想像もつかないほどの重圧を背負って走っているのだ。