<63>ヘルニア手術で主治医の「復帰した例ない」のひと言に私が返した言葉
エンゼルスの大谷翔平選手が手術した。右肘にメスを入れるのは2度目だという。
私も過去に一度だけ、手術経験がある。2000年3月、そのシーズン最後となる長野での世界距離別選手権大会だった。試合当日、ベッドから起き上がれないほどの激しい腰痛に襲われた。
痛み止めを飲みながらレースには出場。試合後にMRIを撮ると、第4、5腰椎の「アンコ」(椎間板中央にある髄核)が飛び出し、神経に触っているのがくっきりと映し出されていた。それを見た瞬間、担当医に「これは手術しないとダメですよね」と聞いた記憶がある。
当時、ヘルニアの手術に踏み切って現役を続ける選手は少なく、担当医からは「復帰したスピードスケート選手はまだいません」なんてことも言われたが、私の返答は、「そうですか、じゃあ、明日にでもやってください」。私がその第1号になってやるという気持ちだった。
今は大きくメスを入れない内視鏡手術が主流だが、当時はまだ広く普及しておらず通常の手術で傷痕は50ミリと大きかった。