広岡達朗GMが自ら招聘したバレンタイン監督と「内部抗争」に…両氏の考えは正反対、水と油だった
ボビーにとって、大リーグではあり得ないGMの現場介入は面白くなかったようで、「グラウンドの中は任せてくれ」といら立っていた。開幕前から不穏な空気が流れていた。
コーチや選手にも不安があったのは確かだ。こんなに早く練習が終わっていいのか。これで勝てるのか……。キャンプから特打や特守は禁止。「特訓」と呼べるものは全くなく、これまでに経験したことのない緩やかなペースの練習に私も戸惑った。
案の定、開幕後は勝てなかった。4月は8勝14敗1分けで最下位。一部のコーチがボビーのやり方に対する不満を広岡GMにぶつけた。後で聞いたところによると、「練習時間が短い」「負けても怒らない」「具体的な指示を出さないで自分で考えろと選手任せ」といった内容で「これではチームが弱体化する」と訴えたという。同じ考えだった広岡GMは「このままでは暑い6月以降、夏場を乗り切れない」と危機感を覚えたそうだ。それでもボビーは涼しい顔で「短期間でチームが劇的に強くなるはずはない。6月には上昇する」と突っぱねたという。
ボビーは「自分で考えない選手は成長が止まってしまう」と話していた。選手に出すのはヒントまで。あとは自分で考えるように仕向けていた。今なら当たり前だが、当時の日本人には理解しがたい考え方だった。そんな中、2人の確執を決定付ける“事件”が起きたのだ。