《松永浩美の巻》僕が専属打撃投手をしていた頃にブチギレさせてしまった「初球ボール」
「おまえらも生活かかってるんだろうけど、俺らも生活かかってるんだ。しっかり頼むわ! いいか!」
非情とも言える厳しさですが、打撃投手としての仕事、心構えを教えてくれたのも事実です。
打撃については常に真剣そのもの。オープン戦中の特打で2日連続、1時間半投げた時は、肘がぶっ壊れるかと思ったくらいです。3日目に松永さんが熱を出して練習を休んだ時は、「ラッキー! 俺の肘もつわ」と喜んでいたら、石毛宏典さんや小川史さん、森脇浩司さんがやってきて、「松永、熱出したんだって? じゃあ、俺らに投げてよ」と、また1時間半(笑)。さすがにギブアップしました。
それでも打撃コーチだった高橋慶彦さんに「絶対に開幕戦に連れていくから、用意だけはしていてくれ」と励まされ、開幕戦に合流。3連戦が終わった翌日の練習日、リハビリのために「5分だけでも投げさせてくれませんか?」とお願いすると、球団は「やめておいた方が……まあ、絶対に5分以上投げるなよ」と渋々ながらOKを出してくれました。
ところが、投げ始めて2、3分後、どこで見ていたのか松永さんがヘルメットとバットを持ってきて、ひゅーっと打席に入った。そこから30分以上です(笑)。球団には「な? こうなるのが予想できたから止めたんだよ。もう明日から休めんぞ」と呆れられましたが、松永さんに「ありがとう、いい練習できたわ」と言われたことが救いです。
次回はいよいよ最終回。「世界の王」の話でこの連載を締めましょう。