街歩き歴30年 作家・川本三郎氏の「東京文芸散歩」

公開日: 更新日:

「シリーズ2の『毒猿』が発表された91年は都庁舎が完成した年であり、そのきらびやかなビルの裾野に広がる雑踏のような歌舞伎町が舞台です。台湾閣という建物を死闘の場として登場させているのですが、これは新宿御苑の中に実在。昭和天皇の成婚祝いに台湾人が贈ったという歴史があることを、私はこの本で初めて知りました」

 いずれも犯罪と都市の関わりを描いた興味深い作品だ。

■渋谷

 1960年代前半、東京五輪を間近にした渋谷を舞台に描いた青春小説が荒木一郎著「ありんこアフター・ダーク」(小学館 690円)だ。

「ありんことは当時、渋谷の道玄坂にあったジャズ喫茶で、ここに通い、町を『学校』にしている主人公・僕の目に映る渋谷がイキイキと描かれています。今は失われた東京の町を走る都電、恋文横丁、映画館のパンテオンなども懐かしい。さながら東京の町が裏の主人公といった感じですね。また63年当時は学校教育と別に、独自にジャズやファッションなどを楽しむ“不良”が輝いていた時代でもあり、そこも読みどころのひとつです」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…