「自分という奇蹟」五木寛之著
生き方、考え方の基本を説いたエッセー集。
気持ちが滅入って仕方がないとき、著者は困難な状況の中で生き抜いた人の悲惨な運命のことを考えることにしているという。そんなときに思い出すアウシュビッツ強制収容所から生還した医師が書いた本「夜と霧」を紹介しながら、夕日の美しさに見とれるなど、日常なにげなくやっているようなことが、人間に生きる力を与えてくれたり、強く支えてくれたりすることがあると説く。さらに1本のライ麦の苗が1万キロ以上の根を張り巡らすことを例に、私たちはたくさんのものに支えられて奇蹟的に生きているのだと、失敗を重ねても、偏見に包まれても、生きていることにまず価値があることを伝える。(PHP研究所 600円+税)