【ニッポンを知る 】右旋回を続けるニッポン。その姿を多方面から検証しよう。

公開日: 更新日:

「軍隊とスポーツの近代」高嶋航著

 戦前戦中の高校野球を描いた映画などを見ると決まって軍が野球を敵性遊戯あつかいで目の敵にする場面が出てくる。だが、実は旧軍こそが日本における野球の普及発展に尽力した組織だったのだ。本書はそんな知られざる日本スポーツ史を軍隊の側から調べ上げて論じた好著。

 れっきとした学術書だが、シロウトにも実に面白い。野球好きの俳人・正岡子規と旧制中学で同級生だった海軍の秋山真之も野球好きで、この伝統は明治の海軍兵学寮にまでさかのぼるという。特に兵学寮の改組で生まれた海軍機関学校は野球もラグビーサッカーも盛んで、ガリ勉ぞろいの海軍兵学校を尻目にイギリスのパブリックスクール流のエリート健児精神を盛んにしていたという。この軍の伝統からやがて大学野球、ついで高校野球が盛んになったのだ。

 他方、陸軍はスポーツ擁護派と敵視派に分かれ、それは軍の強化をめぐる認識の違いとも関わっていた。精神主義に凝り固まって「玉砕の軍隊」へと突っ走った歴史はこのスポーツ敵視から生まれたのである。(青弓社 3400円+税)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  2. 2

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  3. 3

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  4. 4

    中居正広氏「性暴力認定」でも擁護するファンの倒錯…「アイドル依存」「推し活」の恐怖

  5. 5

    大河ドラマ「べらぼう」の制作現場に密着したNHK「100カメ」の舞台裏

  1. 6

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  2. 7

    フジテレビ“元社長候補”B氏が中居正広氏を引退、日枝久氏&港浩一氏を退任に追い込んだ皮肉

  3. 8

    下半身醜聞ラッシュの最中に山下美夢有が「不可解な国内大会欠場」 …周囲ザワつく噂の真偽

  4. 9

    フジテレビ第三者委の調査報告会見で流れガラリ! 中居正広氏は今や「変態でヤバい奴」呼ばわり

  5. 10

    トランプ関税への無策に「本気の姿勢を見せろ!」高市早苗氏が石破政権に“啖呵”を切った裏事情