「非常時のことば」高橋源一郎著
人気作家が「ことば」について考えたエッセー。
東日本大震災と原発事故は、戦争以来の災害だった。震災直後、その66年の間で、同じテーマについてもっともたくさんのことばが生み出されたが、それでも多くの人は「ことばを失った」と感じていた。実は「すぐにことばが出る」というのは異様な状態ではないのだろうかと指摘。あの日から特別な時間の中にいると感じているのに、なにがどのように変わったのか、それが分からない。そんな分からないことを目にしたときは、すぐに答えを出そうとせずに「わからない」と言って、ゆっくり考えればいいと説く。
文学や政治家の演説などを取り上げ、震災後にことばがどのように変わったのか考える。(朝日新聞出版 620円+税)