「文豪の凄い語彙力」山口謠司著
松本清張の「鬼火の町」に「八百善などの料理屋が猟官運動や利権運動の談合場として利用された」という表現がある。「猟官」の「官」は「官職」を意味し、「猟官」とは、なりふり構わず官職を追い求める、きわめて下品な様子だとか。
プロレタリア作家、宮本百合子は「前進的な勢力の結集」の中で、「日本の知性を押し潰そうとしている力に左袒している」と、「左袒」という難しい熟語を用いている。これは積極的に力を貸すという意味で、「史記」に、前漢の武将、周勃が、「劉氏につく者は左袒(左側の襟を開いて左肩を出す)せよ!」と言った話が載っている。文豪にならって、一度使ってみたい言葉を紹介。(さくら舎 1500円+税)