「人を見る目」保阪正康著
東西の古典をひもとき、古今変わらぬ人間の本性をあぶりだした人間観察エッセー。
「お追従」の項では、古代ギリシャのアテネの広場で人間を見続けた哲学者テオプラストスの著作「人さまざま」の一節を取り上げ、へつらう相手の権力が大きいほど、見返りを期待すればするほど、お追従の姿は醜くなると説く。昭和10年代の陸軍もお追従を競い合い、陸軍大将の東条英機からしてお追従が大好きで、目をかけた人間のみ周囲に集めたといい、東条にへつらうのを公然と拒否する人間がいれば戦争の内実も変わっていたに違いないと指摘する。
そのほか、「パンセ」や「徒然草」などを読み解きながら、昭和史に踊ったおせっかいな人や横柄な人、臆病者の生態を描き出す。
(新潮社 760円+税)