「二〇二五年、日中企業格差」近藤大介著/PHP新書/2018年
中国が10年以内に米国と肩を並べる超大国になるということは確実だ。より正確に言うと覇権を求める世界第2位の帝国主義国家になるということだ。
現代社会においては、政治や軍事よりも経済の方が重要な意味を持つ。この点で、中国の巨大企業は国家と一体となった重商主義政策を進めていることが、本書を読むと明らかになる。
興味深いのは、中国の巨大企業がヨーロッパ、アジア、ラテンアメリカの国々と特別の契約を結び、中国共産党政権の利益を忠実に拡大しながらビジネスを展開していることだ。
<興味深いのは、アリババが中小国家と契約を結ぶ戦略である。いかにも中国的な発想だが、中小の国家に進出する際、その国の一企業と提携するよりも国家と丸ごと契約してしまった方が効率的かつ大規模な契約が取れると考えているのである(中略)/アリババは、習近平政権の外交戦略「一帯一路」と平仄を合わせるように、着々と「世界包囲網」を構築しつつある。その合言葉は、「全球買、全球売、全球付、全球運、全球遊」(世界中で買い、世界中に売り、世界中で払い、世界中に運び、世界中で遊ぶ)>
かつて英国は、東インド会社という国策会社を通じて、植民地支配を展開した。巨大な資本とIT技術を用いながら、アリババは、21世紀の東インド会社になろうとしている。
米国や日本は、中国をWTO(世界貿易機関)に加盟させることによって、経済と貿易に関して国際基準のルールを中国に守らせようとした。しかし、このアプローチが完全に間違っていたことが本書を読むとよくわかる。
中国は、WTOのゲームのルール自体を変更しようとして、部分的にはそのことに成功してしまったのである。
これから日本は、「中国模式」という、中国が一方的に作り出した奇妙なルールに従うことを余儀なくされるような状況に陥りかねない。
中国の脅威から、日本国家と日本企業、さらに日本国民を防衛する国家戦略を真剣に考えなくてはならない時期に至っている。嫌な時代がやってくる予感がする。
★★★(選者・佐藤優)
(2018年9月21日脱稿)