「迷走生活の方法」福岡伸一著
「動的平衡」の著書でお馴染みの著者が、目に見えないウイルスに翻弄される今の時代におすすめの生活方法として、「迷走生活」なるキーワードを提唱したエッセー集。
迷走生活とは、さまざまな出来事に右往左往する生活ではなく、迷走神経を活性化させる生活の意味。アグレッシブに行動したり闘ったりするより、心身をリラックスさせるべく迷走神経に代表される副交感神経系を優位にすると、免疫力が上がり、ウイルスの悪影響も遠のくらしい。
さらに、ウイルスと人間とはもともと共存状態にあるため、持久戦に持ち込んでおとなしくなるように手なずけるしかないことも解説。加えて上空の気温や気圧、風向きなどのデータを飛行機が収集しているため、コロナ禍で飛行機が減便されたことに伴い、データを集めにくくなり、天気予報が外れやすくなったことも紹介されている。
ほかにも狭心症の薬が勃起不全を治した仕組みから、災害にも耐えうる生命的な建築物が立つ都市の在り方や、沖縄からブラジルまで38分で移動できる地球トンネルまで、好奇心をくすぐる話題を科学者ならではの視点で語り尽くしている。
(文藝春秋 1980円)