「海を見ていたジョニー」五木寛之著
淳一が開店準備中、10カ月前に突然姿を消した常連客のジョニーが現れる。淳一は、中学卒業後、姉の由紀が営む「ピアノバー」を手伝っていた。港が近いこの店には、古いピアノがあり、キャンプのアメリカ兵や外国船の船員、そして日本人ミュージシャンらが勝手に弾いていた。店でジャズに魅せられた淳一も、トランペットを吹くようになっていた。
1年以上前、店が終わった深夜、海辺で練習をしていると、声をかけてきたのがジョニーだった。ジョニーは、元ボクサーのジャズメンで、以来、店に足しげく通っては淳一らとセッションをしていた。淳一は彼からジャズを学んだ。しかし、目の前にいるジョニーは以前の彼とは違っていた。
デビュー翌年に発表した作品集の新装版。
(講談社 737円)