「会って、話すこと。」田中泰延著
「何をどう話せばいいか?」など、会話について悩んだことのある人はいるだろう。しかし、これまでさまざまな人と対談をしてきた著者はその経験から、多くの場合、「他人はあなたに興味がなく、実はあなたも他人に興味ない」という。だから会話では自分のことは話さず、相手のことも聞き出さなくてよい。
では、何を話すかというと、「外部のこと」である。政治の問題や世界経済を話題にすると会話でなく議論になってしまうので、共感が得られるもの、たとえばその日の天気などにする。そして、「入道雲というのはね……」などちょっとした雑学を付け足せば会話のとっかかりは出来上がり。つまり会話を支えるのは「知識」なのだ。
また会話を盛り上げようと「ツッコミ」をする人がいるが、これは不要。ツッコミはマウンティングに他ならず、また「超ウケる~」など褒め言葉も、審査員目線で感じが悪い。逆に、誰かが「ボケ」たらボケを重ねていく。ボケとは仮説であり、仮説に仮説を重ねることにこそ会話の楽しさがあり、「連歌」にも通じる遊びの本質であると説く。
人はなぜ会って話すことを欲するのかを考察しながら、「会話は距離の取り方が大事」「機嫌よく生きることの大切さ」などシンプルな会話術をつづる。
(ダイヤモンド社 1650円)