「聖刻」堂場瞬一著
六本木署に、大物司会者・前尾昭彦の息子、弘大が元恋人で女子大生の古島萌を殺したと出頭した。捜査1課の女性刑事・柿谷晶が取り調べに当たるが、弘大はなぜか動機については言おうとしない。
「いつもテレビで偉そうに人の批判をしている人は、自分が叩かれると急に引っ込む」などと、インターネットで父親の前尾へのバッシングが始まり、前尾は司会を務めていた番組を降板する。自宅の情報がネットに載ったことから、前尾の妻と娘はホテルに避難することに。晶は理事官の三浦亮子に前尾の家族のケアを指示される。
「あなたなら、加害者家族の痛みが分かるでしょう」──この人は私の過去を知っている、と晶は気づいた。
事件の加害者家族への誹謗や中傷の残酷さに視点を据えたサスペンス。
(講談社 1870円)