「デカメロン・プロジェクト」ニューヨーク・タイムズ・マガジン編 マーガレット・アトウッドほか著 藤井光ほか訳
2019年に「私」が入居したニューヨークのアパートは、ウイルス禍により入居者の半分が消えた。別荘に避難したり、実家に戻ったり、入院したりしている。
管理人のアンドレスは空き部屋のドアに目印の「V」を書いている。同じアパートに住んでいるピラールはコロンビアからやってきたピアニストなので、私はリモートでピアノのレッスンができるように設定しようかと声をかけた。彼女は、画面上ではみんながつながっているという幻想が生まれるが、ここを出ていけない私たちは見捨てられたのに、どうして目を背けるの? と言った。
ペストが猛威を振るった時代に書かれた「デカメロン」のように、コロナ禍に生まれた29の物語。
(河出書房新社 3135円)