「信長、鉄砲で君臨する」門井慶喜著
時は天文12年。種子島の南端に一隻の船が現れた。船から下りてきたのは見たこともない南蛮の商人。種子島の領主・種子島時堯に鉄砲を売りたいというのだ。
人を殺すことができる新しい武器に興味を持った時堯は、商人から2丁の鉄砲を手に入れた。1丁は島内西ノ村の村長・織部に渡して鉄砲の製造を命じたものの、もう1丁は紀伊国根来寺の杉ノ坊という僧に半ば脅されるようにして持っていかれてしまった。那古野に城を与えられたばかりの吉法師こと将来の織田信長は、この根来寺で鉄砲に出合い、弓と刀の戦いから脱却した鉄砲を使った天下取りを確信するのだが……。
本書は「家康、江戸を建てる」の著者による最新作。戦国時代の勢力図を一気に変えた鉄砲の出現を巡って、西洋文明と初めて対峙した種子島といち早く鉄砲製造へと動いた根来寺の役割、新奇な武器に魅了され新たな戦法と銃に適した築城をも編み出した信長の先見性が描かれる。
当初、ほかの武士からは蔑まれた鉄砲を、乱世を制する強力な武器として信長が巧みに利用したことで、日本が大きな転換期を迎える様子が興味深い。
(祥伝社 1980円)